エクスポートのことを考えるのは、たいてい手遅れになってからです。機能が終了し、モデルが差し替えられ、あるいはアプリの方向性が変わる——それだけで数か月分の会話に手が届かなくなります。今年もっともはっきりした例が中国でした。ByteDance は2026年7月15日前後に Doubao のカスタムAIエージェントを停止し、残しておきたいものを取り出すために2026年10月15日まで閲覧のみのアクセスを認めました。これほどの猶予もなく終了する例のほうが、むしろ多いくらいです。その背景にある規制は中国のAIコンパニオン規制の記事で扱っています。
削除は権利。エクスポートはたいていボタンすらない
会話を消す手段やアカウントを閉じる手段は、ほぼどのアプリにも用意されています。規制当局がいちばん強く求めてきたのがそこだからです。一方で、データを使える形で外に出すことは別の話で、この分野がいちばん弱いところでもあります。「データをダウンロード」のワンタップ機能は一部のアプリにはあり、多くのアプリにはありません。ですから最初にやるべきことは、「あるはず」と決めつけずに実際に探すことです。
ボタンがなくても、法律が助けになる場合があります。EUのGDPRでは、データポータビリティの権利(第20条)が自分でサービスに提供した個人データを対象とし、構造化され、一般に利用されている、機械可読な形式で渡すことを求めています。カリフォルニア州のCCPA(CPRAによる改正後)でも、事業者が保有する自分の個人情報を項目ごとに、やはり持ち運べる形で請求できます。どちらの法律も、使いやすいエクスポート画面をアプリに作らせるものではありません。それでも、期限つきで文書として出せる請求手段にはなります。
保存しておく価値があるのは4つ
「自分のデータ」という言い方では動けません。コンパニオンアプリが抱えているものは4種類あり、持ち出そうとしたときの振る舞いがそれぞれまったく違います。
| 中身 | なぜ大事か | ふつうの入手方法 |
|---|---|---|
| 会話ログ | 会話そのもの。愛着が向かうのはここ | エクスポート機能があればそれで。なければ開示請求か、手作業でのコピー |
| キャラクター/ペルソナの設定 | 説明文、性格、話し方、シナリオ——キャラクターを成り立たせているもの | キャラクターの編集画面で見えるのがふつうなので、エクスポート機能がなくてもテキストとしてコピーできる |
| 保存されたメモリ・プロフィール情報 | アプリがあなたについて導き出し、セッションをまたいで使い回している内容 | メモリ画面が用意されている場合のみ。なければ内部データのままで、目にすることはない |
| 生成した画像や音声 | 課金して手に入れたかもしれない出力物 | 端末に1ファイルずつ保存。まとめてのダウンロードはまれ |
見落とされがちで、しかもいちばん価値があるのは2行目です。会話ログは記録ですが、キャラクター設定はレシピです。ひとつしか保存できないなら、レシピを選んでください。どの項目が効くのかはキャラクターカードの中身の記事で分解しています。
取り出す手順
- 設定のなかを「データ」で探す。 エクスポート、ダウンロード、アーカイブ、プライバシー関連は、チャット画面ではなくほぼ設定にまとまっています。
- 各キャラクターの編集画面を開いてテキストをコピーする。 名前、説明、性格、会話例、冒頭シーン、世界観メモまで——自分で管理できるプレーンな文書に貼っておきます。
- メモリやプロフィールの画面があるか確認し、載っている内容をコピーします。これはプライバシーの確認も兼ねます。残りの項目はプライバシーチェックリストにまとめました。
- 開示請求を出す。 会話ログが大事でエクスポート機能がない場合です。プライバシーポリシー記載の窓口にメールし、自分に適用される法律を挙げ、「すべてのデータ」ではなく会話ログを名指しで求めます。
- 生成した画像や音声を保存する。 とくに有料プランで作ったものは忘れずに。
- アプリの外に置く。 自分のドライブやクラウドフォルダへ。不安のあるサービスの中に残したままでは、バックアップとは言えません。
これは、すべてがまだ動いているうちにやっておくことです。終了のお知らせが出てからでは遅い。閲覧のみの期間は短く、サポートの列がいちばん長くなるのは、まさに全員が必要としているときです。
一緒には移らないもの
完全なエクスポートができたとしても、コンパニオンを別のアプリへ移せるわけではありません。理由を知っておくと、落胆をだいぶ避けられます。
- 共通フォーマットがない。 メモリやペルソナの状態をどう表すか、アプリ間に合意はありません。あるアプリのエクスポートは、別のアプリにとっては構造のない文字列にすぎません。
- キャラクターの半分はモデル側にある。 声の質感、間の取り方、断り方は、土台のモデルとアプリ独自のシステムプロンプトから来ます。どちらもエクスポートには入りません。同じ説明文を別のアプリに入れれば、はっきり別のキャラクターになります。
- アプリが作った要約は残る。 あなたについてアプリが生成した要約は、あなたが提出した文章ではなくアプリの成果物です。自分のメッセージと比べると、ポータビリティ請求の根拠としては弱くなります。
- 量が敵になる。 400ページのログを役立つ形で読み込めるものはありません。コンテキストウィンドウには限りがあるからです——メモリと連続性の解説で説明しています。
実際に効くのは、まったく地味な方法です。キャラクターと、本当に大事な数個の事実を200語ほどの要約にまとめ、新しいアプリの説明欄やプロフィールに貼る。生のログよりも、そのほうが「あの感じ」を取り戻せます。
使い始める前に確認しておくこと
ポータビリティは、失うものがまだないうちがいちばん判断しやすく、そのまま品質のサインにもなります。
- 設定にエクスポート機能はあるか——そして、そこに何が含まれるのか。
- 保存されたメモリを見て編集できるか、それとも見えない層のままか。
- プライバシーポリシーに開示請求の窓口と回答期限が書かれているか。
- サービスが終了した場合に履歴がどうなるか、書かれているか。
- キャラクター設定は編集できて、いつでもコピーして持ち出せるか。
これらはメモリの質やプライバシーと並べてアプリの選び方で重み付けしており、評価方法でもアプリの主張と、実際に確認させてくれる範囲を突き合わせて採点しています。基準の当てはめ方を見たい方は、キャラクター中心のプラットフォームを扱ったMusePick レビューと、パーソナライズ中心のWhatCanIDoWith レビューをどうぞ。
よくある質問
AIコンパニオンの会話履歴はエクスポートできますか?
できる場合もあります。エクスポート機能は今も例外的なので、まずアプリの設定を確認してください。設定に何もなく、GDPRやCCPAのようなデータ保護法の対象になっているなら、運営会社に直接データの写しを請求できます。
エクスポートした会話は別のコンパニオンアプリで使えますか?
そのまま読み込むことはできません。メモリやペルソナの状態にアプリ間の共通フォーマットがないため、あるアプリの会話ログは別のアプリにとっては単なる文字列です。実際に引き継げるのは、自分で書いた短い要約をキャラクター説明やプロフィールとして貼り直したものだけです。
アプリが終了したら会話履歴はどうなりますか?
運営がどれだけの猶予を設けるかで決まります。ByteDance が2026年7月に Doubao のカスタムエージェントを停止したときは、残したいものを取り出せるように2026年10月15日まで閲覧のみのアクセスを認めました。もっと短い予告で機能を閉じたサービスもあります。だからこそ、必要になってからではなく早めにエクスポートしておくほうが安全です。