9月17日に欧州委員会が提案したもの
ストラスブールで出されたプレスリリースは、4つの柱を掲げています。SNS利用の先送り(15歳未満は自分名義のアカウント不可、13歳から保護者管理のミニアカウント、13歳未満はSNS不可)、18歳未満が使うサービスへの「安全設計」義務、プライバシーに配慮した年齢確認、そして委員長の言葉を借りれば「立証責任を逆転させる」執行モデルです。同じリリースには、コンパニオンアプリの利用者が最も気にするであろう一文が入っています。AIコンパニオンとチャットボットは初期設定でオフにしなければならず、感情的依存を生む形で対人関係を模倣してはならない、という文です。
法形式が重要です。これは規則(Regulation)の提案なので、成立すれば加盟27か国に国内法化なしで直接適用されます。理事会は9月18日、条文全文を文書ST 13321/26として回付しました(機関間ファイル番号 2026/0286 (COD))。欧州委員会によれば、法案は60名超の専門家からなる「子どものオンライン安全に関する特別パネル」の2026年7月の報告書を土台にしており、ユーロバロメーター調査で欧州市民の92%が子どものオンライン保護強化を求めたことも引用しています。
対象は誰か:新たな2つの定義
第2条は対象となるサービスとシステムを列挙します。SNS、動画共有プラットフォーム、アプリストア、オンラインゲーム、OSと並んで、2種類のAIシステムが名指しされ、第3条がそれらを定義しています。
| 用語 | 法案の定義 | 当サイトの読み |
|---|---|---|
| AIコンパニオン | 汎用AIシステムを含むAIシステムであって、ユーザーとの社会的・感情的・対人的な関係を模倣または促進する、継続的でパーソナライズされた対話や交友を提供するもの。 | コンパニオンアプリ、キャラクター・ロールプレイ系プラットフォーム、「友だち」「恋人」として売られるアシスタントは、この文言の真ん中に入ります。 |
| 汎用会話型チャットボット | ユーザーと直接やり取りする汎用的な会話機能を持ち、複数の領域やタスクで支援できる汎用AIシステム。カスタマーサポート、技術サポート、教育など特定用途に限られたものは除外。 | 汎用アシスタントは対象、銀行のサポートボットは対象外。 |
適用範囲で注目すべき点が2つあります。第一に、第2条3項により、この規則はEU域内でそうしたAIシステムを市場投入または供用する提供者に、その所在地を問わず適用されます。カリフォルニアやシンガポールから運営されるコンパニオンアプリも、EUのユーザーがインストールできる時点で対象です。第二に、第2条4項は、教育機関が運営する主に教育目的のサービス、純粋に科学研究のためのシステム、公的機関専用のシステムを適用除外としています。
第14条:コンパニオン提供者の6つの義務
第2章第3節は短いものの、一行一行が今日のコンパニオンアプリの設計判断に直結します。第14条1項は、AIコンパニオンと汎用会話型チャットボットの提供者に、システムにアクセスしうる未成年について少なくとも次の措置を義務づけます。
| 号 | 提供者の義務 | コンパニオンアプリで該当する機能 |
|---|---|---|
| (a) 依存を生む設計の禁止 | 感情的依存を生みやすい対人関係の模倣にあたる設計・挙動を避け、第9条1項・3項の利用時間制限と中断のルールを適用する。 | 罪悪感をあおる別れの挨拶、「会いたかった」と呼び戻す通知、連続記録、区切りのないセッション。 |
| (b) 安全な初期設定 | 第11条の初期設定を適用し、未成年の過去のやり取りから得た情報や分析を、初期設定では後続の会話に使わない(安全確保や設定の実現に必要な場合を除く)。 | 永続メモリ、長期のユーザープロファイル、会話履歴に基づくパーソナライズ。 |
| (c) 取引の透明性 | 第13条の経済取引に関するルールを適用する。 | チャット内課金、ギフト、ジェム、会話の中でのサブスク誘導。 |
| (d) 13歳未満のアクセス | 13歳未満のアクセスは、第20条の保護者向けツールを通じてのみ有効化・管理する。 | 子ども単独のアカウント不可。保護者がシステムをオンにする必要がある。 |
| (e) 市場投入前のテスト | 未成年の健康・安全・基本的権利・ウェルビーイングへのリスクについて最先端の評価とテストを行い、安全策を講じてから市場投入する。 | 自傷、性的内容、操作に関するレッドチーミングは、炎上の後ではなくローンチ前に。 |
| (f) 投入後の監視 | 投入後に害や新たなリスクを特定・評価・軽減し、未成年が関わる重大インシデントを検知して対応する。零細・小規模企業はこの号のみ免除。 | インシデントの記録と対応手順が、ポリシーページの記述ではなく法的義務になる。 |
第14条3項は、遵守を示す一つの道筋として、第23条に基づき欧州委員会が「適切」と評価した行動規範への準拠を認めています。前文(40)はその限界も示しています。行動規範は措置型の義務の遵守を示す材料にはなるが、禁止規定を免れる根拠にはならない、というものです。
「メモリは初期設定でオフ」の条文上の意味
見出しでは(b)号が「チャットボットは子どもを忘れなければならない」と圧縮されがちです。実際の条文はより狭く、ある面ではより広いものです。狭いのは、これが禁止ではなく初期設定だからです。システムは、初期設定では未成年の過去のやり取りから得た情報を後続の会話に使ってはならないが、未成年の安全確保や設定の実現のためなら例外が認められます。前文(32)はその理由を、システムが子どもの機微なデータを蓄積したり、有害なやり取りのパターンを長期にわたって強化したりしないよう、未成年との会話の永続メモリは初期設定で無効にすべきだ、と説明しています。
広いのは、同じ前文がメモリを越えて挙動にまで及ぶからです。未成年は、感情的依存やその他の依存を生みやすい挙動、感情や対人関係の模倣にさらされるべきではなく、その依存が他の人間との関係を損なう場合も含む、とされています。これは多くのコンパニオンアプリの中核となる体験ループそのものの描写です。こうしたシステムで「メモリ」が何を指すのかの技術的背景は、ペルソナメモリの解説と記憶と継続性の記事で、コンテキストウィンドウと保存されたプロファイルの違いを扱っています。第14条1項(b)が引いている線は、まさにその境界です。
EUだけの動きではありません。2026年9月10日に署名されたカリフォルニア州SB 1119も、子どもユーザーの永続メモリを初期設定で無効にします。両者はそれ以外のほぼすべての点で異なります。
| 設計上の論点 | EU KIDS法案(第14条) | カリフォルニア州SB 1119(2026年9月10日署名) |
|---|---|---|
| 未成年のメモリ | 初期設定でオフ、安全確保の例外あり | 子どもユーザーの永続メモリを無効化 |
| セッション制限 | 第9条3項により利用時間の上限と中断、睡眠時間と学校の時間を保護 | 1セッション1時間、1日2時間 |
| 最年少層 | 13歳未満は保護者向けツール経由のみ | 年齢確認をしない限り、子ども向け保護を全ユーザーに適用 |
| テスト | 市場投入前の評価と投入後の監視 | リリース前に文書化されたリスク評価 |
| 制裁の上限 | 全世界年間売上高の最大6% | 影響を受けた子ども1人あたり5,000ドル(過失)、15,000ドル(故意)、私人訴権あり |
| 状況 | 法案。発効から6か月後に適用 | 成立済み。事業者の義務は2027年7月1日まで |
カリフォルニア側はアダム法の記事で扱いました。2つの条文を並べて読むと、未成年向けコンパニオンアプリの初期設定がどこに収れんしつつあるかが見えてきます。メモリはオフ、時間には上限、ローンチ前にテスト、です。
コンパニオンがSNSやゲームの中にある場合
第14条2項は、コンパニオンが単体アプリではなく機能として組み込まれる、増えつつあるケースを扱います。AIコンパニオンや汎用会話型チャットボットがSNS、動画共有プラットフォーム、オンラインゲームの中で提供される場合、プラットフォームは、そのシステムが自動で起動せず目立つ場所に表示されないこと、未成年に利用を促さないこと、未成年がいつでも簡単にオプトアウトできることを確保しなければなりません。第8条3項は、こうした組み込み型システムには、プラットフォーム向けの規則一式を二重に課すのではなく、コンパニオン固有の節と年齢確認・保護者向けツールの一般章だけが適用されることを確認しています。
成人ユーザーが読むべき箇所:第8条
成人の体験を変える義務は、第14条ではなく別の場所にあります。第8条1項は安全設計の一般義務を定めたうえで、その仕組みを付け加えます。提供者はサービスとシステムを初期設定として子ども向けの安全要件に沿って設計しなければならず、第5章に基づく年齢確認でユーザーが成人だと確認した後にのみ、その要件から外れることができます。
EUで提供されるコンパニオンアプリに残る選択肢は2つです。全ユーザーにメモリオフ・依存を生む挙動なしの未成年向け仕様を提供するか、年齢を確認してその先で成人向け体験を解放するか。欧州委員会のQ&Aによれば、年齢はプラットフォームから独立した認証済みの手段で確認され、無料のEU年齢確認アプリや、将来的には欧州デジタルIDウォレットが含まれます。オーストラリアのアプリストアや英国オンライン安全法のもとですでにそうであるように、EUのコンパニオン・キャラクターアプリ利用者にも年齢確認の画面が当たり前になると見ておくべきです。プライバシーと年齢確認のガイドでは、どの方式が最もデータを残さないかを説明しています。
執行:AI法の枠組みと6%の上限
第34条は監督をサービスの種類ごとに分けています。SNS、動画プラットフォーム、ゲームプラットフォーム、アプリストアにはデジタルサービス法(DSA)の仕組みが適用されます。AIコンパニオンと汎用会話型チャットボットについては、第34条2項が監督をAI法(規則(EU) 2024/1689)第9章に委ね、違反にはAI法第99条に基づく行政制裁金が科されます。上限は、提供者に故意または過失がある場合、前会計年度の全世界年間売上高の6%です。加盟国はDSAとAI法のもとで指定した当局に新規則の執行権限を与えなければならず、欧州委員会は超大型プラットフォームに対して既に持つ権限を維持します。プレスリリースはさらに、欧州委員会が90日以内に調査を終えるべきとする迅速手続きにも触れています。
これは、AI法第50条の透明性義務とは別の執行枠組みです。第50条は2026年8月2日から適用されており、チャットボットに相手が機械であることの開示を求めます。KIDS法はその義務の上に積み重なるもので、置き換えるものではありません。
スケジュール:決まっていること、決まっていないこと
- まだ何も適用されていません。 欧州委員会は通常立法手続きに従って条文を欧州議会と理事会に送付しました。双方が最終案に合意する必要があります。Freshfieldsの分析はおよそ2年の交渉を見込み、欧州委員会は迅速な採択を求めています。
- 発効から6か月後。 最終条は適用開始を発効の6か月後と定め、超大型プラットフォームのコンプライアンス計画義務(第5条)は即時、支援関連の2条は12か月後としています。
- 定義が争点になります。 「AIコンパニオン」と「汎用会話型チャットボット」の境界、教育目的システムの適用除外は条項ごとに争われるでしょう。CMSは、交渉で定義・基準・義務がどう修正されるかを注視するよう企業に助言しています。
- 市民団体は緩和ではなく強化を求めています。 Euronewsによれば、Eurochildはこの規則を「十分に厳しくない」と評し、擬人化や迎合的な設計への規制を求めています。一方Euroconsumersは、すでに約30%のユーザーが虚偽の年齢を申告していると指摘しており、これは独立した年齢確認に反対する根拠ではなく、むしろ必要性を示すものです。
いま欧州でコンパニオンやキャラクターアプリを選ぶ人にとって、実務的な結論は単純です。この法案が狙う設計要素、すなわち履歴に基づくメモリ、感情的に引き留める再呼び戻し、チャット内での課金は、契約前に確認しておく価値のある項目とまったく同じです。プライバシーチェックリストで、アプリの設定からそれらを見つける手順を解説しています。
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EU AI法第50条:コンパニオンアプリが開示すべきこと アダム法(SB 1119):カリフォルニアのコンパニオンチャットボット法 豪アプリストアの年齢確認、AIコンパニオンにも及ぶ AIコンパニオンのプライバシーと年齢確認よくある質問
EU KIDS法とは何ですか?
EU KIDS法は、欧州委員会が2026年9月17日に採択した規則案(COM(2026) 681)です。SNSで自分名義のアカウントを持てる最低年齢を15歳に統一し、18歳未満が使うSNS、動画プラットフォーム、オンラインゲーム、アプリストア、AIコンパニオン、汎用会話型チャットボットに安全設計の義務を課し、年齢確認に関するEU共通ルールを設けます。成立には欧州議会と理事会の合意が必要です。
EU KIDS法は子どものAIコンパニオン利用を禁止しますか?
いいえ。AIコンパニオンそのものを禁止するわけではありません。第14条のもとでは、13歳未満のアクセスは保護者向けツールを通じてのみ有効化・管理でき、すべての未成年について提供者は、感情的依存を生みやすい対人関係の模倣設計を避け、過去のやり取りの利用を初期設定でオフにし、ローンチ前にテストし、その後も監視しなければなりません。
第14条の「メモリは初期設定でオフ」とはどういう意味ですか?
第14条1項(b)は、未成年の過去のやり取りから得た情報や分析を、初期設定では後続の会話に使わないことを求めます。未成年の安全確保や安全設定の実現に必要な場合は例外です。前文(32)はこれを、未成年との会話の永続メモリを初期設定で無効にすることと説明しています。未成年向けの初期設定であり、成人のメモリを禁止するものではありません。
EU域外に拠点を置くコンパニオンアプリにも適用されますか?
はい。第2条3項は、AIコンパニオンと汎用会話型チャットボットについて、この規則はEU域内でそうしたシステムを市場投入または供用する提供者に、その設立地や所在地を問わず適用されると定めています。
AIコンパニオン提供者への制裁はどのようなものですか?
第34条2項は執行をAI法第9章の枠組みに委ねています。違反にはAI法第99条に基づく行政制裁金が科され、提供者に故意または過失がある場合、上限は前会計年度の全世界年間売上高の6%です。
EU KIDS法はいつから適用されますか?
法案段階なので、まだ何の義務も適用されていません。条文は、規則が発効から6か月後に適用され、超大型オンラインプラットフォームのコンプライアンス計画義務は即時に適用されると定めています。まず欧州議会と理事会が最終案に合意する必要があり、法律事務所の分析はおよそ2年の交渉を見込んでいます。